不登校カウンセラーで現役塾講師の前田です。
「非行や家庭内暴力には走っていないので
それほど深刻に考えないようにしていますが
部屋にひきこもって2年になります」
とのご相談を受けました。
たった3行の短い質問ですが
この中に”大きな勘違い”が含まれています。
この勘違いをしているうちは
不登校もひきこもりも解決しません。
このお母さんがどんな勘違いをしているか
お気づきになりましたか?
・・・
この相談をしてきた親御さんは
「非行や家庭内暴力よりも
ひきこもりの方がまだマシだ」
と考えています。
確かに万引きや恐喝、窃盗など非行に走って
警察のご厄介になり少年院に入るより
ひきこもりの方がまだマシ…
というお気持ちもよくわかります。
「他人に迷惑だけはかけるな」
としつけてきたでしょうから
誰にも迷惑をかけず自宅にいるだけマシと
考えたくなりますよね。
しかし、不登校の重症度からすれば
ひきこもりが最も重症なのです。
大切なので、繰り返します。
ひきこもりが最も重症です。
なぜか?
非行も家庭内暴力も
人と関わる事をまだ諦めていないからです。
ひきこもりよりも非行の方がマシな理由
考えてみて下さい。
非行していれば悪事に手を染めるでしょう。
万引きやバイクの窃盗、
カツアゲ、恐喝、暴走行為、
ケンカして相手を病院送り、
悪いトモダチとつるんで色々とやらかします。
しかし、悪いトモダチとはいえ
人とつながりたいという気持ちは
まだ残っているんですよ。
(親なんて1ミリも信用できないけど
あいつらは信用できる)
そう思っているから
悪いトモダチであっても付き合うのです。
悪いトモダチとわかっていても
側にいないと孤独なのです。
だから、悪い事だとわかっていても
トモダチとの関係を壊さないために
非行に走ります。
非行をしている間はお互い「共犯関係」という
それはそれは強固な人間関係でつながれます。
家族とのつながりがないなら
せめてトモダチとはつながっていたいのです。
かなり屈折した人間関係ですが
誰かとつながっていたい気持ちを残しているだけ
ひきこもりに比べればまだ軽症と言えます。
ひきこもりよりも家庭内暴力の方がマシ
また家庭内暴力もひきこもりよりは軽症です。
お子さんの家庭内暴力にお困りでしたら
本当に苦しい毎日だと思います。
子どもが自宅のカベを殴って
どんどん穴を開ける姿を見ると
もう目を覆いたくなりますよね。
子どもの事を思って建てたマイホームが
どんどんボロボロになるのを見ていると
泣きたくなっているかもしれません。
子どもに殴られて顔にアザができてしまい
仕事を休まざるを得なかったかもしれません。
お父さんやお母さんの気持ちとしては
先が見えず本当に苦しい毎日でしょう。
しかし、実は、この家庭内暴力さえも
ひきこもりのお子さんにとっては
”1つのコミュニケーション”なのです。
叫んでいるんですよ、必死に。
「もっと自分のことを見てくれよ!」
「一切口を挟まずに最初から最後まで
自分の話を聞いてくれよ!」
「どうして自分のやりたいように
させてくれないんだよ!」
必死に叫んでいるんですよ、心の中で。
でも、それなりの年齢だから
話をちゃんと聞いてくれなんて言えないし
言ってもムダかもしれない…。
自分はこの家族に必要とされていないから
もう死ぬしかないのかもしれない。
しかし、どうせ死ぬなら
最後に思いっきり自己主張しよう。
そんな気持ちで、暴力という
最後の手段に訴えかけているんです。
何を隠そう・・・
僕も実家のカベを殴って
たくさんの穴を開けてきました。
ある時、運悪く鉄骨の柱を殴ってしまい
右手の中指を骨折しました。
激痛でした。
しかし、それでもカベを殴り続けました。
指一本くらい砕け散っても
親に自分の気持ちを伝えたかったのです。
我ながらつたない方法だと思います。
もっと冷静に伝えられたら…と思いますが
そんな事さえ頭が回らないんですよ。
それくらい子どもなのです。
思い出して下さい。
言葉を使えない赤ちゃんは泣き叫ぶ事でしか
自分の要求を伝えられませんよね?
あれと同じです。
家庭内暴力を繰り返す子どもも
親子の信頼関係がないので
こんな方法しか選べないのです。
しかし、この家庭内暴力も
ひきこもりよりまだマシです。
家庭内暴力という間違った方法とは言え
親とコミュニケーションを取る気持ちが
まだわずかながら残っているからです。
ひきこもりの本質的な問題とは?
ひきこもりの本質的な問題は
人とつながりを持つ事を諦めている点です。
非行も家庭内暴力も
悪い仲間や間違った方法を選んでいるとは言え
仲間や家族とつながる事は拒否していません。
一方、ひきこもりは完全に「ひとりきり」の世界です。
他の記事でもお伝えした通り
人は社会的な動物ですから
一人では生きてはいけません。
一人はあまりに孤独で、あまりに辛すぎます。
なにかしらの理由で家族がいないなら
天涯孤独であることも受け入れられるでしょう。
しかし、ひきこもりの子どもには
家族がいて親がいます。
にもかかわらず、孤独なのです。
これはそこらの孤独とはワケが違いますよ。
ひきこもり中は孤独ですから
思考がどんどん自分中心に回り始めて
いつしか絶望にも似た感情になります。
絶望は人から全ての希望を奪います。
(自分には何の価値もない…)
(隕石が地球にぶつかって
全員死んでしまえばいいのに…)
(他人がどうなろうと知った事か…)
どんどんこんな気持ちになるのです。
いいですか?
あなたのお子さんがひきこもりなら
いずれこんな心境に進みます。
ですから、ひきこもりで部屋にいるからと
甘く見ないで下さい。
本来、不登校であれば学校に行けなくても
家の中は自由に動き回れるはずなんです。
しかし、それすらできなくなっている危うさに
どうか気づいてあげて下さい。
今、お子さんがひきこもりになら
すぐに行動を起こす必要があるという事です。